石坂文学(石坂洋次郎)に登場する板留温泉(黒石温泉郷)



板留温泉
 黒石温泉郷には古くから風流人や文人墨客が訪れていました。
この板留温泉にも大町桂月や若山牧水、大和田建樹、秋田雨雀、鳴海要吉他の数多の文人が機会あるごとに訪問し、湯に浸かり浅瀬石川の瀬の音に耳を澄ませながら過ごしたとのことです。

 弘前市代官町生まれの作家で、「青い山脈」等でよく知られている石坂洋次郎も津軽や弘前近辺を題材とした作品を世に出しています。

 その中の
『霧の中の少女』は地名や温泉名をはっきりと記してはいませんが、当時の黒石町と板留温泉、中野もみじ山をこの小説の中で伝えています。作品の発表は昭和29年頃、町村合併をする前の黒石市は黒石町、板留温泉は旧山形村に位置しますから山形温泉郷の中に含まれていました。
 ちなみに作品の中の黒石町は「A町」、板留温泉は「B温泉」と記載されていて、地元に住む人からすれば、古き町の様子が走馬灯のように浮かんでくるような文章です。

 黒石出身の女学生が夏休みで帰郷している際に、突然訪ねてくる友人である男子学生。彼と女学生、その妹の三人で過ごす板留での時間。霧に包まれた閑静な板留温泉の戸外浴場での川を渡る夜霧の情景は、まさに詩情豊かと・・・・・。



黒石温泉郷・板留温泉